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2018-02-01

「メルボルンカフェ料理は、驚き、感動、そして満足。培った技術と知識を使って、メルボルンを伝えたい。」Sakiさん 後編

 

日本でメルボルンカフェを伝える、という高い使命感を持ち、クオリティの高い料理とコーヒーを提供している、食堂黒猫のオーナーシェフ Sakiさんと、ロースター&バリスタ Chrisさん。

インタビュー前編では、Sakiさんのメルボルンでのシェフ生活について伺いました。

後編は、沖縄でカフェをオープンしてからぶち当たった高い壁、そしてブレークスルーしたお話しです。

インタビュー前編をまだお読みになってない方は、ぜひこちらもどうぞ!

「メルボルンカフェ料理は、驚き、感動、そして満足。培った技術と知識を使って、メルボルンを伝えたい。」Sakiさん 前編

料理は実力主義の世界。性別、国籍は関係ない。

Tomo (以下T): Sakiさん小さいし、アジア人でしかも女性。大きな男の人たちと肩を並べて働いてて、見下されたりとか、悔しい思いとかいろいろしました?

Saki(以下S): あった、あった。でも、料理の世界は実力主義なんで、出来るか出来ないかなんですよ。

私がThree Bags Fullに入って、クビになった人が二人いたんです。それもオーストラリア人。

私はその人たちより英語はできないけど、パフォーマンス力は自信がある。

私、一度見ただけで、その料理の再現をほとんどできるんです。

あと、小さいから小回りが利いて、めっちゃ素早いっていう。(笑)

だから、体の大きさじゃなく、英語がしゃべれる、しゃべれないじゃなく、料理出来るか、出来ないかで勝負していたので、結果がついてきた、というか。

料理は自分の言葉。自分の言葉は自分でお客様に届けたい。

T: いつ頃から、自分でカフェをやろうと思ったんですか?

S: Oraで創作料理を作っていた時に、1時間くらいで売り切れてしまう様な人気料理が生まれることがあるわけなんです。そう言う料理を自分が作って、すごく売れたときに、ヘッドシェフとスーシェフ(副料理長)が自分が作ったみたいな言い方するんですよ。

そういう時は、違う違うってちゃんと言うんですけど、そういう事が結構重なってしまって…。

自分の試作を、「来週スペシャルにしようと思ってるんだ~。」って言ったりすると、ヘッドシェフとスーシェフがその料理をスペシャルとして勝手に出してしまってたりとか…。「こ、これ、この間私が言ってたやつとまったく同じじゃん!」みたいな。

そういう事が重なり過ぎてしまって。
私の作った料理を、他のシェフが自分の物にしたいって思ってくれてるって事は、「あ、認めてもらってる。」って思いました。

自分の料理は自分の言葉だし、今まで歩んできた自分の全てを注ぎ込んでるから、それが他の人に自分の作品だって言われるのがどうしても許せなかった。

だったら、自分のお店で、自分の料理を、自分で届けられる方が、他の人に横取りされることを悩むより全然いいと思って。

T: 人の作品を盗んで、そのシェフたちにはプライドがないの⁉って思っちゃう。

S: それほど切羽詰まってるんです。創作に追われて、そのプレッシャーに耐え切れずに辞めていったシェフをたくさん見てきました。

その中でも潰れずに、ずっと生み出していく強さを持てた時に見える物がある。

日本の人々に、料理でメルボルンを伝える、という使命


T: 沖縄を選んだのはどうしてですか?

S: 暖かくて緩やかで、ちょっとリラックスしてる所が良いってクリスが言って。
メルボルンは乾燥してて、クリスはアレルギーが出やすかったし、温度も安定しないから、風邪も引きやすかったので、暖かい所が絶対いいって言ってたんです。

じゃあ、沖縄?って感じで。

下見に来たときに、人が記憶に残るほど、みんな親切なのに感動したし、カフェが丘の上とか、全然他にカフェが無いような所でカフェをやっている方が多くって、しかも、それが名店になっている。

それを見たときに、これは沖縄ならどこでもカフェをできるかもしれない、って思ったんです。

T: 暖かい所ならオーストラリアでもクイーンズランドとかありますけど、なぜ日本だったんですか?

S: クリスは、日本に長く住んでみたかったんですよ。留学とかじゃなく。

クリスのPhDの勉強が終わって落ち着いて、私もOraでやり抜いた頃だったし、メルボルンの人にも受け入れられている感覚もある中で、メルボルンをちゃんと日本に伝えたいという使命感が出てきたんです。

自分が歩んできた道を活かすことは、人の喜びにつながるかもしれない。

それで決意したんです。

これから、メルボルンをうたうカフェがどんどん増えてくると思うんですよ。その中の一番になるんじゃなくて、「メルボルンカフェだったら、ここは絶対行った方が良いよ。」っていう一軒になりたい。

T: お店ですが、高台のしかも2階という分かりにくい所にありますが、ここをあえて選んだ理由は?

S: 最初は山とか海の近くって思ってたんですよ。街からは離れてる方が良いって思ってて、1年くらい探してたんですけど、いい条件の所が見つからなくて。

ここの物件は、探し始めたときからずっと貸し手が見つかってなかったんですね。で、もう一回この物件を見直した時に、内装をあまり手を加えなくてもそのままいけるかもしれないって思って。

あとは、景色。

海が見えて、首里城が見える。

これだけ広がった景色をシティにいながら見ることはなかなかできないと思ったんです。

モノレールからも近いので、歩いて駅から来られる。

それで交渉を始めて、3回くらい断られてたんですけど、半年くらいかけて説得しました。

ここにして良かったと思ってます。

私たちは、やってる事が独特なので、普通のカフェと思って来られるとギャップを感じてしまうと思うんです。お客様には、ある程度ここに来たいと思って来て欲しいと思ってるので。

カフェがありそうに無い丘を登り、その道の先は行き止まりになっている。そんな理由が無いと入らないような道の先にお店があるんです。

選んでこの道に入って来ていただける、それが私たちみたいなお店にはむしろピッタリだと感じています。

メルボルンのやり方そのままでは、日本のお客さんには伝わらない。

T: オープンして3年経った今、振り返って、これは大変だった!っていう経験は?

そんな経験だらけだと思いますけど。(笑)

S: まず、スペシャリティコーヒーはお料理とセットで来ると思われていたこと。

Chris(以下C): 一番大変だったのは、最初、メルボルンでのカフェのやり方をそのままこっちでやっていたけど、全然受け入れられなかったこと。

S: そう。メルボルンでやっている料理をそのまま出しても、お客さんには伝わらないんですよ。

T: 何で伝わらないのかが私には分からないんですけど…。

S: だから私も最初壁にぶつかったんです。何でわかってもらえないんだろう…って。

で、メルボルンまんまでは、日本人には伝わらないっていう事に気づき始めたんです。

オープンから今まで、創作料理を53品作ってきてるんですよ。創作を重ねるたびに、何で駄目だったんだろう?って思って、違う物を創作してきてるんです。これがダメだったら、ああしたらどうだ?こうしたらどうだ?って。

そういう事を繰り返してきて、分かったことは、

カジュアル=簡単料理

ってお客さんはまず思ってしまっていること。

でも、メルボルンのカジュアルは、いろんなスキルを持っているシェフが、すごく手が込んでいて、良い素材を使った料理を、カジュアルな形に落とし込んでいるだけ。

だけど、どうやったってこちらでは、カジュアルという形だと伝わらないんだ…っていうのが私たちの中ではありました。

シェフを辞める覚悟で次のステップへ。


S: 私たちは、限られた時間と人数で、週5日働いて、こだわれるだけこだわって料理してたんです。

でも、どんなに作ってもお客さんにメルボルンが伝わってる感覚が無い。

それがオープンして2年半の時でした。

そこから、2週間ちょっとお休みをもらって、創作の期間に入ったんです。

そこで私たちは、ステップアップをはかろうってことで、思い切った決断をしたんです。

今までこれだけやっても伝わらなかったから、その決断がダメなら、自分が間違ってるんだなって思った。

お客さんに伝わらないのは、お客さんが悪いんでもなんでもなくて、自分がずっと間違ってたんだ、っていう事しかありえないから。

次のステップで、お客さんの反応が得られなかったら、私はシェフを辞めるかもしれないって思ってました。

そのステップアップで自分たちが決めたのは、

1.表現を諦めない。

限られた時間、人数で出来ることをするんじゃなくて、やりたい事をちゃんと時間をかけて、ちゃんと創作にして届ける、っていう事を大事にしたんです。
オープンして2年半は休みなく働いてたけど、全然伝わらなかった。
今はオープンを週4日にして、丸2日を仕込みに、1日をお休みにしました。

2.メルボルンで感じるエキサイトメントと同じ感情を生み出す料理を作る。

例えばマッシュドアボカドやリコッタパンケーキといった、メルボルンっぽい料理だけではダメなんです。

メルボルンのカフェカルチャーは、お客さんが食べ物を見たときに、期待以上の物が出てきて「ワオ!」ってなって、エキサイトして「食べたい!」ってなって、食べて「おいしい!」ってなって、結構いい値段するけどそれだけの価値はあったとフルに満足する。

その感覚がメルボルンなんです。

伝わってるという手ごたえ。

メニューには、料理の説明がかなり詳しく書かれている。

S: メニューをリニューアルして料理の質と完成度を上げてから、それに比例して値段は上がりましたが、お客さんの感動の度合いがガラッと変わりました。

今までのお客さんはもちろん、新しいお客さんも増えてきたし、今まで滅多に無かったことですが、お一人で二皿食べる方が出てきて、お二人で三皿食べるというのは、珍しくなくなってきました。

最後は、お客さんの方から溢れる感動を伝えてくれるんです。こういう事は今までの料理では無かった。

伝わってる。

手ごたえを感じました。

お客さんのリアクションを見たときに改めて感じたのは、メルボルン料理はレシピじゃない。

どうカフェのパフォーマンスを上げて、お客さんを感動につなげられるか。

私たちは2年半で、言わなければどれだけ伝わらないかを身をもって知っているので、メルボルンのこと、そして、私たちがどういう思いで料理を作品として作っているか、ということをしっかりとお届けしています。ここまでやらないと、行ってみたいと思わせるくらいのメルボルンのすごさは伝わらない。

シェフを辞めるかもしれない覚悟で本気でやっていたので、やっと「ああ!間違ってなかった、自分!」って思いました。

この価格帯で、お客さんお一人で二皿食してくださるというのは、私に自信をくれますし、料理人として誇りでもあります。

目指しているメルボルンカフェとは。

オリジナルブレンド。 豆は、お店でクリスさんが焙煎している。

C: 日本でのカフェ料理のイメージは安いイメージ。

だから、私たちも値段をおさえないといけないのかな、という気持ちもありつつ、良いものも出したい、というジレンマと戦ってきました。

でも今は、妥協しない良質なメルボルンカフェ料理を、それに見合った価格で運営する、という方向でブレていません。

例えば、鉄板焼き屋さんだったら、日本では一般的に1万円、2万円はするというイメージがあって、そういう場であると広く受け入れられてますよね?

消費者にとって、場所によって払っても良いという値段が違う。

私たちは、メルボルンカフェとして、そういう所を目指してるんです。

S: 安いカフェ飯という位置づけにしてしまいたくないんです。

今後の展望

プロのメルボルン料理人に成って12年。 独立しお店を開店して3年半が経ちここで更に強く感じている夢があります。

それは、まずメルボルンスタイルカフェとしてビジネス自体をしっかりと成功させる事。

次に料理人としてのキャリアの無限の可能性と、その活動領域を厨房だけに止まらず、最大限に活かし貢献していく活動として、真剣に取り組んでいるのが自社のオリジナル製品作りです。

主にオリジナルブレンドのスパイスや調味料を手掛けており、皆さんの食卓を海外で培った感性を活かした製品で楽しく豊かにしていくお手伝いになれる物を手掛けています。 (2018年より小売店にも卸が始まっている)

最後に、メルボルンのカフェ料理・コーヒーは過去10年程で大きく進化し成熟の段階に入っていると思います。 その著しい食とコーヒーの進化の過程を舞台裏で支え、共に進化して来ました。

メルボルンクラシックからモダンメルボルンカフェ料理に携わってきた一人の料理人として、 いずれ『メルボルン料理』というものをフレンチ、イタリアン、スパニッシュのように一つのCuisine (料理の区分)として世の中に受け入れて頂きたい!というのが最大の目標です。

それを叶える手段として、今後 メルボルン料理、そして自身が経験して来た事を盛り込んだ書籍、或いは映像(映画)をいずれ制作したいと考えています。

これは、辛い修行を乗り越えて、長年メルボルン料理を追いかけ続け、日本で試行錯誤しながら、メルボルンを表現することに一切の妥協を許さずにカタチにして来た、自分達にしか果たせない使命のように感じているんです。

自分が料理を続けて来た意味を真剣に考え、培った全てを日本そしてメルボルンに貢献出来る事に力を注いで行きたいと思っています。

日本の皆さんにも喜んで欲しいのは勿論ですが、いつかメルボルンにも食堂黒猫の 存在と活動を喜んで頂ける日が来るのを夢見ているのも事実です。

クリエイティブでアーティスティックメルボルン気質で、いくつになっても夢を持ち、それを叶える目標を掲げ、実現していける大人でありたいと思います。

おわりに

いかがでしたか?

インタビュー記事を作成しながら、また新たに勇気と元気をいただきました。

使命を自覚している人は、どこまでも強くてしなやか。

そして、すごく清々しい。まるで、厚くたちこめる雲の向こうには、いつも青空が広がってる事を知っているかのように。

 

食堂黒猫

instagram: https://www.instagram.com/okinawa_black_cat_cafe/

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blog: http://kuronekookinawa.hatenablog.com

 

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